■ 創作論 ■

■徹底的に起承転結

作例:『7th day』の紹介

ここからはストーリーの書き方について、この創作論を書くきっかけにもなったSRCシナリオ『7th day』を作例にして進めていきたいと思います。
『7th day』を知らない方にも分かるように書き進めていきますので、その点はご安心ください。
ただ、ネタバレを含んでしまうことになるので、できることならあらかじめプレイしてくださると幸いです。
『7th day』は恐らく僕が作ったSRCシナリオの中で、最もストーリーが評価されたシナリオだと思います。
そういう意味でもオススメしておきます。

お話の基本は起承転結にあり

ステマはこれくらいにしておいて、本題に入りましょう。
物書きであれば、いや、そうでない方もみなさんご存知と思いますが、物語を構成する手法で起承転結というものがあります。
なにを今更と思われるかもしれませんが、これは古今東西あらゆる物語を構成する上での基本中の基本です。
「俺はそんな普通のやり方に縛られたくない!」という方もいるかと思いますが、それは基本をしっかり身に着けてからでも遅くないはずです。
『7th day』をはじめ、学園コンペや現在連載中のコスピでも起承転結を強く意識して書いています。
起承転結がしっかりしていれば絶対に面白いお話になるというわけではありませんが、最低条件ではあると考えています。
ここでは起承転結にそれぞれどのような役割を持たせるべきかを書いていきたいと思います。

『起』――物語のセットアップ

まずはその物語はどのような世界で、どのような人物がいるかなどの基本情報を提示してやる必要があります。
いわゆる、天地人の紹介です。
 天…時代
 地…舞台
 人…人物。人間関係
もちろん、ただ設定を羅列すればいいなんていうことはなく、物語の中で自然にそれらが伝わるように工夫してやらなければなりません。
それから、最も重要なのは、主人公がこの物語でなにをしようとしているのかをその理由も含めて提示してやることです。
これが曖昧だったりすると、芯の通らないふにゃふにゃした物語になってしまいます。

では、作例として『7th day』の『起』はどうなっているか見ていきましょう。
『7th day』では1日目~2日目で死体を発見するところまでが『起』にあたります。
1日目で主人公達は時間の止まった世界に閉じ込められたことを知ります。
主人公達3人は元から友人なので、ほとんど説明を省いています。
時間が止まったことについて調べようと行動を起こした結果、2日目で死体を発見することで更に状況が変わっていきます。
ここまでで、『時間が止まったことの謎の解明』と『生き残ること』の2つが提示されました。
生きるために行動するというのは誰しも共感できることだと思いますし、動機付けとしてこれ以上強力なものはありません。
それから、なぜ時間が止まったのか、なぜ死体が転がっていたのかなど興味を引く謎を散りばめておくのもポイントです。

『承』――目的に向かって進むこと

『承』では『起』で提示した主人公が目的に向かっていく様子を書いていきます。
多少の寄り道はかまわないと思いますが、基本は常に主人公が目的達成のために行動を起こしている様を書くべきです。
あっちこっち関係ない行動を起こしたり、そもそも明確な目的が提示されていなかったりすると、やはりふにゃふにゃな物語になります。
ポイントは常に障害を置くことです。
平坦な、簡単に達成できる目的だと、受け手に緊張感をもたらすこともなく、退屈にさせてしまいます。
障害を1つクリアしたら、次の障害が現れ、それをクリアしたらさらに次の障害が……という風に常になにかしらの障害を持たせてやることです。
それから、結末に向けての伏線、前兆を仕込んでやる必要もあります。

『7th day』では3日目~6日目までが『承』にあたります。
主人公達は『時間が止まった謎の解明』と『自分達の身を守る』ための行動を起こしていきます。
3日目で出会った新しいメンバーを加えて進んでいきますが、謎の手がかりはなかなか掴めません。
そんな中、仲間達は無残にも殺されていきます。
これはしつこいくらい繰り返されて、犯人への怒りを高めることで、クライマックスでの逆転劇を盛り上げるために一役買っています。
それから、仲間達の固有アイテムも紹介していて、後の伏線にもなっています。

『転』――気持ちのいい大逆転を

『転』では『起』で提示され『承』で盛り上げた物語にオチを付けます。
これまで仕込んできた伏線などをここで一気に紐解いていくわけです。
逆に言えば、この『転』が決まらなければ、『承』も書けないということにもなります。
どうしてそういう結末になるのか、納得のいく状態をこの『転』に至るまでに仕込んでやらなければなりません。
勝負は戦う前から決まっているとはよく言ったものです。

『7th day』では7日目で犯人を倒すところまでが『転』にあたります。
7日目でとうとう仲間も2人だけになります。
そして、ついに主人公は犯人の正体を暴いて、見事打ち倒します。
この逆転のシーンはほんの一瞬で瞬間的に終わっているところがポイントです。
仲間達の固有アイテムを使って達成できたことであり、そのことも語ってはいますが、ほんの少しだけです。
必要な情報はすでに前の段階で仕込んであるのですから。

『結』――目的達成の余韻

『結』では主人公が目的を達成したことを強調して、テーマを定着させてやります。
『転』の段階で物語の目的は達成しているので、あまりだらだら『結』を書くのは好ましくありません。
『転』がメインディッシュだとしたら、『結』はデザート、あるいは食後のコーヒーです。

『7th day』では7日目で犯人を倒したあとからEDテロップが流れるまでが『結』にあたります。
とは言え、この作品ではほんの些細な短いものです。
自分が助かったことや死んでいった仲間達のことを思って締めるだけの内容になっています。

まとめ

物書きとして活動してる方なら、なにを今更というような内容ばかりだったかもしれませんが、僕が押さえておくべきと思う起承転結の基本は以上になります。
繰り返しますが、これは基本であって、これさえ守れば面白くなるというわけではありません。
ただ、ご自分の作る物語を振り返ってみて、なにか心当たりのあるような部分があれば参考にしてくださったら幸いです。

次項では更に作例の『7th day』の裏話を交えつつお話していきたいと思います。

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